外国人的伝達

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あなたは外国人になったことがあるだろうか?

20歳の終戦記念日、中国を経由してタイ、バンコクに行った。中国からバンコク行きの飛行機に乗り遅れる。その時、僕は紛れも無い外国人であった。「アイムレイト」 「エアープレイン」 と何度言っても伝わらず、絵を描いて伝える作戦に切り替える。

永遠に会話ができないと思っていた中国人のお姉さんは、言語で無く、イラストを間に挟むことによって会話をした。無事、新しい航空券を買えることになる。

バンコクでは友人と安いゲストハウスを更に値切る。「トゥーエクスペンシブ」みたいなことを言ったが、あの言葉には意味は無かった。おそらく、宿泊料を安くしてくれたのは、金の無さそうな若者に見えたからだ。

外国人として見る景色は、周りの全ての人が素敵にも怪しくも見える。何を言っているのか全くわからない。

話しているその相手が何を言おうとしているかの判断は、何を言ったかじゃない。目の輝きや、ジェスチャーや、話す言葉のイントネーションや、その人のテンションの中にあった。 その時、僕の言葉も、聞こえてくる言葉も、意味ではなく音楽として存在した。

イタリア人とカリブ族の人と、何処かの島の人と酒を飲む。そこは、弾き語りのミュージシャンの居る場所だった。そのミュージシャンは、ジョン・レノン、ボブ・マーリー、ニルヴァーナ、ジミ・ヘンドリックスなんかを良い感じにカバーして歌った。

僕は、ジョン・レノンの曲が聞こえてくれば「ジョン・レノン!」と言った。 知らない曲が聞こえてくれば「アイドンノウ」と言った。ほとんどそれだけが僕達の会話だった。「ジョン・レノン!」という言葉はもはやミュージシャンのジョン・レノンとしての意味を失い、何か自分の感情を表す為の言葉だった。僕は外国人となったその時、「ジョン・レノン」という言葉で喜怒哀楽を表すことができた。あとは、「イェー」とか「ウー」とか言ってるだけで良かった。

意味は無くても出会いは楽しく、別れは切なく、怒ったりも落ち込んだりもした。

僕は意味として何も伝えられず、また、誰からも意味として何も伝えられることは無かった。 それでも一つ言えることはあの時一緒に酒を飲んだ謎の言語を話す人達とは会話をすることができた。

怪しげなタクシーに乗り、dustboxを聞いている時、僕は意味がわからないのに感動していた。

僕はそのポイントがとても気になる。意味を持たない会話をやりたい。

そう、そんな、ポテズムービーを作るのだ!

「ガッ!」「ポー」「ジー」「アァー」

そんな言葉だけで会話をする。

2015年8月13日

ポテっとした気持ち

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ポテっとした人と、ディーン!って人がいる。

22歳の頃、藤沢の飲み屋で僕は友人に不意にそう宣言をした。

その宣言をするまで僕自身すらそんな違いがあることなんて微塵も知らなかったが、急に、そんな気がしてきたのだ。

面白いもので、そんな気がしてくると本当に世界はそうなっているように見える。

花屋の前で立ち止まり、じーっとしている女の子。訳の分からないことを突然告げたかと思うと、去って行くおじいさん。 子供が作った謎のハンドメイド品。幼稚園の頃、おままごとをしている時。勝手にお母さんでもお父さんでもない、ペットの犬でもない、なんなら親戚のおじさんの友達ですらない。予想外の役割を演じる子。

彼らはポテである。

一緒にいた友達も納得した。 それでは、ディーン!って人とは誰か!?

あの、行ったことないけど、六本木とかにいるような…

なぜそれだけでわかるのかはわからないが、どうやらそれも納得したようだった。

つまらなく見えた街に、ポテ族とディーン!族が生息することがわかり、途端に景色が面白くなった。

あの娘はポテだ あいつはディーン!だ とひたすら暗号的な命名を行っていく。

やや、ディーン!族に対する敵意を持ちながら、あまり社会に馴染もうとしない、かといって反社会的でも無いといった、不思議な存在、ポテ族を見つけては心の中で少し喜んだ。

ディーン!族になれば金も稼げ、異性にもモテ、社会的にうんたらかんたらという一方、ポテ族は全く金も稼げず、変なやつだと思われ、社会とよばれるものにも疎まれる。

彼らは好きな花を街で見つけたことを喜び、音楽を聞いて驚く。猫についていって道に迷う。そんなことをしている間に歳をとってしまい、今更ディーン!族になる気もなく、他の種族にはなろうとしても、結局ポテ族であることがばれてしまう。

行き場も居場所もなくなった時が何度もあった。 そんな時、何に救われたか。

それはポテである。

居場所を探してブックオフで買ってきた本のページをめくる。僕は居場所をくれる一節だけを探す。ひたすら探す。 大して取り上げられているわけでもなく、良く見ないと見つからないページにあなたはいる。

“私は20年間この粘土を…”

バカだ!いや、ポテだ!あなたは正真正銘のポテだ!

なぜ彼はポテを貫いたか。その理由は本人にすら、わからないのかもしれない。だがしかし、貫いた人がいるという事実は、何よりも僕の希望となっている。

明日は朝、早く起きなければならない。飲み終えた酒の缶を、ドラムみたいに叩こうと思っている。わーい、お酒の缶叩くの楽しいよー

そんなことは言わないが、僕に取り憑いたポテは、そう言っているのであった。

2015年 8月10日(火)